『鉄コン筋クリート』『マインド・ゲーム』など、
    刺激的かつ先鋭的なアニメーションの数々を世に放ってきたSTUDIO4℃。

    その創造性と映像のクオリティに惚れ込んだフランスのバンド・デシネ(コミック)作家のギヨーム“RUN”ルナールと、ゲーム・書籍など多彩なメディアで作品を発表する制作会社ANKAMAがラブコールを送り、海を越えたコラボレーションが実現した。
    それが本作『ムタフカズ』である。
    MUTAFUKAZ=ヒスパニック系ギャングのスラング(という設定の造語)で「マザーファッカーズ」を意味する原作コミックの物騒なタイトルどおり、中身も一筋縄ではいかない。失業者が路上に溢れ、カラーギャングが日夜抗争を繰り広げるL.A.のダウンタウンを舞台に、見た目はキュートなキャラクターたちが死にもの狂いの サバイバル劇を展開するバイオレンス・アクション巨編!それでいて等身大の若者たちの友情を描いた珠玉のバディムービーであり、度肝を抜くほどスケールの大きな侵略SFでもある。
    そんな超エキセントリックな作品世界の映像化に、日本側の監督として白羽の矢が立ったのは、個性派アニメーターとして長年注目を集めてきた異才・西見祥示郎。『鉄コン筋クリート』のキャラクターデザイン・総作画監督、『下妻物語』『少年メリケンサック』のアニメパート演出、『バットマンゴッサムナイト』のエピソード監督などを経て、今回満を持して長編監督デビューを果たした。

    本作では彼の驚異的ビジュアルセンスと卓抜した作画力、語り口と画作りの巧さが際立つコンテ設計、キャラクター描写へのこだわりが余すところなく発揮されている。『鉄コン』同様、美術監督・木村真二とともに創り出した架空の街“ダーク・ミート・シティ”の圧倒的ビジュアルは、本作のもうひとつの主役と言えよう。さらに日本語版のボイスキャストには、主人公アンジェリーノ役に草彅剛、その親友ヴィンス役に柄本時生、同じく友人のウィリー役に満島真之介という豪華な顔ぶれが実現!

    明日をも知れない若者たちの焦燥をユーモラスに、かつ共感度たっぷりに熱演し、実写作品にも引けを取らない見事なアンサンブルを聞かせてくれる。劇中、重要な役割を担う覆面レスラーたちの声を、桜庭和志・所英男・中村大介ほか、現役の格闘家たちが凛々しく演じているのにも注目だ。
    テレビアニメでは到底表現できない過激でリアルなバイオレンス、既成概念にとらわれないキャラクター造形、一度見ただけでは把握できないほど緻密なディテール描写を追求した世界観は、いま日本で作られているどの映像作品よりも「自由」だ。すべてのリミッターを解除したアニメーションならではの快感が、ここにはある。

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